“Regional Advantage” by AnnaLee Saxenian 「現代の二都物語」山形浩生・柏木亮二訳

についてのメモ。

日本語訳だと一部わかりにくいところがあり、原文を読んだ方がよいのかな。

「二都」とはアメリカのニューイングランド(ルート128)とカリフォルニア(シリコンバレー)のこと。 アメリカの東側で立ち上がったコンピューターという技術とそれに関連する産業が発展してきた背景には、 この両地域での半導体およびコンピューターメーカ−、それもベンチャー企業の急成長がある。 ものすごく大雑把にコンピューター本体側だけの歴史をまとめると、 1960年代まではコンピューターといえばIBMの大型計算機だったのが、 1970年代DECによるミニコンピューターの発見に続くと類似ミニコンメーカーの興隆があり、 それが1980年代にSUNやアポロによるワークステーション(WS)の発見に続くWSメーカーの興隆があり、 と同時に、本当のマイクロプロセッサを使ったPCやAppleなどの小さな計算機の発見とものすごい発展があった。 時代が変わるごとに、新しい小さなものが既存の大きなものの陣地を浸食すると同時に、 それまでになかった市場を開拓してきたので、 1950年代からこれまでのコンピューター本体の関わる産業の成長率はものすごく高かった。 その裏では、半導体産業とソフトウエア産業、あるいは最近だとネットワーク関連産業の大きな発展もあった。 この両地域に絞ると、ミニコンはルート128のもので、WSやマイクロプロセッサはシリコンバレー、 また半導体企業とソフトウエア産業はシリコンバレーが拠点である。 既に「ミニコン」が消えて久しいことからわかるように、1980年代以降、ルート128周辺から、 急成長をとげたような企業は皆無である。一方で、シリコンバレーは1980年代からこの30年以上にわたり、 手を変え品を変え急成長企業が生まれ続けている。最新の最も成功した例はGoogleだろう。 この違いは何か、というのがこの本の主題。

途中、1980年代にシリコンバレーでDRAMを作る企業が成長していたが、 その市場が日本政府の「戦略」により、日本企業の連合に追い上げられ、 結果的にはアメリカからDRAMを作る企業が一層されてしまった件の記述もある。 二都の対比だけでなく、シリコンバレー vs. 日本企業群という対比もあるわけだ (今はこれに、台湾政府、韓国政府、中国政府がプレイヤーとなり、 日本の政府と企業も、1980年代のシリコンバレーと同じ危機を迎えている、というループ)。 後付けの説明としては、その時に日本企業がDRAM市場を席巻したのは、円安のためでなく、 シリコンバレーの会社よりも効率よくDRAMを生産する工場を作ったからとのこと。 60%ぐらいは、今起きていることも全く同じっちゃー、同じ。

その時に、代表的なシリコンバレーの半導体企業であるIntelは、 DRAMからマイクロプロセッサ専業に方針を変え、 他の会社もDRAMのような汎用部品ではなく、 特定顧客向けのカスタムLSIを作る会社になって、その危機を切り抜けてきたという。 この時に、半導体のデザインだけに特化して、製造は他社にまかせるファブレス企業が確立したらしい。

210ページより:

新興企業アルテラの重役は、外部ベンダー利用と社内製造設備の利用とを比べてこう語る。 「われわれはファブを持たないAMDの一事業部なんですが、他のAMD部門から受けるサービスよりも、全くの部外者であるインテル社のファブから受けるサービスのほうが多いですねえ」。 この新戦略は地元新興企業の協力にもつながった。たとえばアルテラ社は、サイプレス社が運営する最先端ファブに投資することで、自分のチップ生産能力を確保することにしたのだった。

(ちなみに、この部分の前段に「ザイリニクス社」とあるがこれはXilinxのことだろうな)

え?って感じがした。原文を見ないとよくわからない。「アルテラってAMDの一部だったの?」と「インテルがファブを外部に解放していたの?」という疑問。後で調べる。

211ページより:アルテラのような新興企業は「ミニファブ」を使うようになったという件に続き

伝統的な「メガファブ」は2億5000万ドル以上して、建設に2,3年かかるが、「ミニファブ」は2000万から5000万ドルで、六ヶ月もあれば作れる。1985年になると、シリコンバレーの新興企業は一つのラインで平均して100種類から200種類の違ったチップを生産しており、その生産量は10個から10000個まで様々だった。

「ミニファブ」で検索すると、日本では2000年代に「HALCA」というプロジェクトに官民あわせて80億円投資がなされたようである。http://www.takeda-foundation.jp/reports/pdf/prj0111.pdf

続く。(続かない 2014記)